メキシコ、トルコ、美味しいところ
Eaterによる2019年春のおすすめcookbook その3
フード情報サイト「Eater」の3月20日付け記事に掲載されていた、この春オススメのcookbook13冊。
これを少しずつご紹介しています。
昨日はアメリカでベトナム料理を語らせたら右に出るものはいないアンドレア・グエンの新刊『Vietnamese Food Any Day: Simple Recipes for True, Fresh Flavors』と、ラム酒を使った「ティキカクテル」のcookbook 『Tiki: Modern Tropical Cocktails』をご紹介しました。
こういう本をきっかけにして、ジャパニーズ・ラムの人気も高まるといいなぁ。
さて今日はどちらもファイドン・プレスから発売された、一流シェフによるメキシコ家庭料理のcookbookと、世界三大料理のひとつトルコ料理を広く学べるcookbookをご紹介したいと思います!
エンリケ・オルベラ、ダニエラ・ソト=イネス、ゴンサーロ・ゴウト&ルイス・アレリャーノ『Tu Casa Mi Casa: Mexican Recipes for the Home Cook』(ファイドン・プレス、3月27日発売)
エンリケ・オルベラの新しいcookbookは、メキシコシティにある有名な彼のレストラン「プジョル」をめぐるものではない。それはメキシコの素晴らしい家庭料理に対するオマージュとなっている。
「世界のベストレストラン50」の常連、メキシコシティの「プジョル」で腕をふるうシェフが、著者のひとりエンリケ・オルベラ。
彼がニューヨークに持っている店「コスメ」「アトラ」を任せているダニエラ・ソト=イネスらとともに書いた『Tu Casa Mi Casa: Mexican Recipes for the Home Cook』は、本文にもあるようにレストランの料理を紹介するcookbookではなく、メキシコ家庭料理のレシピを集めた素朴なcookbookなんです。
「きみの家、ぼくの家」を意味する『Tu Casa Mi Casa』というタイトルが、なんとも素朴な絵本みたいでいいですよね。
100種類のレシピのなかでオルベラは、基本(トルティーヤ、サルサ)から彼のメキシコシティとニューヨークのレストランでの作品を反映した料理(カルニータス、タン・タコス)まで、幅広い作品のコレクションを紹介している。
とはいえ、すべて比較的容易に感じられるものばかり。レシピは「平日の食事」「シェアする料理」といった章に分けられており、後者ではトウガラシの詰め物やバルバコアといった家族スタイルの料理に焦点が当てられている。
揚げたトルティーヤをサルサで煮込んだ「チラキレス」のレシピも載っています。
日本のお茶漬けのように、二日酔いの朝にさらさらっと(?)食べられている庶民的な料理です。
「スイーツ」の章ではオルベラのニューヨークのレストラン「コスメ」と「アトラ」の共同シェフ、デザートで名誉殿堂入りのダニエラ・ソト=イネスが輝きを放っている。彼女の傑出したレシピは以下の通り。チュロス、ベイクド・バナナのクリームとチーズがけ、スウィートコーンのタマレ、などなど。
日本のメロンパンのルーツと言われている「コンチャ」のアレンジレシピも掲載されていますね。
もしあなたが伝統と現代的なメキシコのフレーバーを、自分のレシピのレパートリーに採り入れたいなら、このcookbookがぴったりだ — — エスラ・エロル
ファイドン・プレスからは『Mexico: The Cookbook』というメキシコ料理のcookbookも出版されていますが、あちらはどちらかというと網羅的・学術的で、意外とこっちの『Tu Casa Mi Casa』のほうが実用性が高いかもしれません。
ムサ・ダグデヴィレン『The Turkish Cookbook』(ファイドン・プレス、4月1日発売)
トルコは地中海と黒海の交差点に位置し、ヨーロッパと中東にまたがっていて、地理的には7つの地方から成り立っている。そしてその位置と歴史的遺産が巨大な料理文化を築いてきた。
7つというのは「マルマラ海沿岸」「エーゲ海沿岸」「地中海沿岸」「中央アナトリア」「東アナトリア」「南東アナトリア」「黒海沿岸」の7つでしょうか。
それぞれの地方の特徴はこちらのリンク先を見ていただくとして、
本書『The Turkish Cookbook』は、つい今しがたご紹介した『Mexico: The Cookbook』と同じファイドン社の、国別cookbookシリーズの最新刊です。
トルコ料理を探求するcookbookはたくさんあるが、国内じゅうの村々で地域的な伝統を記録してきた影響力のあるムサ・ダグデヴィレンは、それをさらに一歩押し進めている。
著者のムサ・ダグデヴィレンは、1987年にオープンした「チヤ」など3店のレストランをイスタンブールに所有している、トルコを代表するシェフなんです。
Netflixのドキュメンタリーシリーズ『シェフのテーブル』のシーズン5で特集されたダクデヴィレンは、力強く生き生きとしたトルコの料理を決定的にガイドしてくれる。
そう、『シェフのテーブル』でムサは失われつつあるトルコの食文化を守る「食の考古学者」として、彼のレストラン「チヤ」は「食の博物館」として紹介されていました。
肉のグリルからピラフ、とても甘いペストリーまで。国じゅうを旅することでインスピレーションを得た500種類ものレシピによって、彼はトルコの文化的な豊かさを称えている。
ファイドン・プレスの公式ページによると、総レシピ数は500種類どころか550種類!
元記事に書かれたもののほか、ラム肉のキョフテ、チキンケバブ、トルコ菓子のハルヴァ、やペストリーのバクラヴァといったレシピも掲載されています。
トルコ料理のガイドの決定版であるにもかかわらず、ダグデヴィレンはこれは「単に総覧したにすぎない」と語っているのだから驚きだ — — エスラ・エロル
まずはこの一冊でトルコ料理を俯瞰で眺めて、それから興味のわいたジャンルに深入りしていくのもいいですね。
トルコ料理のcookbookにはこんなものもありますので、興味がありましたらこちらもどうぞ。