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フォーとブリトー、カチョエペペ

いまのうちに読んでおくべきLucky Peachの13のストーリー #3

Junicci Hayakawa / 早川 純一
ククブク
Published in
9 min readApr 3, 2017

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フードマガジン「Lucky Peach」の追悼シリーズ。

過去にLucky Peachに掲載されたフードライティングの中から、Eaterがピックアップした13本の記事をご紹介しています。

第1回では、ジョナサン・ゴールド×ロバート・シェツィマ×ピーター・ミーハンによる鼎談や、ジョン・バーゾールによる、ゲイカルチャーがフードライティングに与えた影響についてのエッセイなどを、

第2回では、フューシャ・ダンロップによる鹿のペニスを使ったスープの調理記や、クラウディア・フレミング、アレックス・リーといった伝説の料理人の半生を追ったドキュメンタリーなどをご紹介しました。

残りのストーリーは5本です。

今回も最後までじっくりおつきあいください!

The History of Pho,” by Andrea Nguyen

アンドレア・グエン「フォーの歴史」

故国ベトナムで幼いころに両親とフォーを食べた思い出から始まるこのストーリーは、作家、ライター、料理講師をつとめるアンドレア・グエンによるもの。

即席めんが発売されるなどして、日本でもだいぶメジャーになってきた感のあるフォーですが、このストーリーを読むと、3500年以上の歴史があるベトナムで、フォーは20世紀初頭に誕生した、比較的新しい料理であることを知ることができます。

フォーの原型は、フランス植民地時代に食べられていた「xao trau」という麺料理。

これは水牛の肉を使ったライスヌードルなんですが、それまで農耕用の労働力として使われていた水牛を、フランス人がステーキとして食用利用しはじめたので、その残りの部位をもれなくいただくために考案されたのだそうです。

それが最初は中国人労働者たちの間で、続いてベトナム人労働者の間で食べられるようになり、1925年ごろには専門店もできるまでになったのでした。

フォーという名前は、「Nguu nhuc phan day(ここの牛肉とコメのヌードル)」が「nguu phan a」と短くなり、「phan a」「phon o」とだんだん短くなって、最終的に「pho」に落ち着いたとのこと。

また、フォーにどんな具材を加えるかというのは、現在でも国の南北で好みの違いがあるようで、これには戦争の影響が大きいと感じざるをえませんでした。

アンドレアのストーリーは、全体としてみれば、ベトナム近現代史として読むこともできるようになっているのがミソ。

そしてストーリーの終盤はcookbookの作者らしく、戦後に生まれたさまざまなバリエーションのフォーについて書かれていて、これがまたどれもおいしそうなんです。

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レシピの詳細は、2017年2月に発売になったばかりのアンドレアのcookbook、『The Pho Cookbook: Easy to Adventurous Recipes for Vietnam’s Favorite Soup and Noodles』にも掲載されていますので、気になったかたはぜひチェックしてみてくださいね。

Instant Ramen Cacio e Pepe,” by David Chang

デイヴィッド・チャン「インスタント・ラーメン カチョ・エ・ぺぺ風」

ストーリー性のあるフードライティングだけでなく、レシピ記事も載せるのがLucky Peachの特徴。

このレシピ記事は、ピーター・ミーハンとともに編集者をつとめ、6年にわたってLucky Peachの顔をつとめてきた料理人、デイヴィッド・チャンが書いたものです。

きっと、Lucky Peachの功労者としての彼に敬意を表して、このレシピ記事が選ばれたんでしょうね。

カチョ・エ・ぺぺは、イタリアでもっともシンプルだと言われるパスタ料理で、ゆでたスパゲティにペコリーノチーズをからませ、コショウをふってしあげたもの。

レストランによっては、ホールのままのペコリーノに穴がくりぬかれ、その中でスパゲティとチーズをからませて提供されることもあります。

デイヴィッドはこのカチョ・エ・ぺぺが好きらしいのですが、その調理がなかなか難しいので、このレシピを作成するにあたり、それをいかに簡略化するかで苦心したのだとか。

レシピのポイントは、麺をゆでるお湯のなかに、ペコリーノチーズ、バター、オリーブオイル、コショウといった調味料をあらかじめ入れておくこと。

そして麺を投入したら、麺がチーズスープをよく吸い込むようにひっきりなしにかき混ぜていきます。

こうすることで、本格的なイタリア風インスタントラーメンにしあがるのだそうですよ。

デイヴィッドのあまたあるレシピのなかからこれが選ばれたのだから、きっと相当うまいんでしょうねー。

今度ペコリーノチーズを買ったら、試してみよう。

Disney Princesses Reimagined as Hot Dogs,” by Anna Hezel and Gabriella Paiella

アナ・ヘーゼル&ガブリエラ・パイエラ「ディズニー・プリンセスをホットドッグとして再考する」

ここからラストまでの3つの記事は、どれもオンラインでしか読めない記事となっています。

で、アナ・ヘーゼルとガブリエラ・パイエラによるこの記事は、一見かわいらしいキャラ弁レシピのようですが、実はディズニー映画に登場する画一的なプリンセスのイメージを皮肉った、おバカ記事。

ネット上には、ディズニー・プリンセスたちがいかに変わり映えしないかを揶揄して、彼女たちをぽっちゃり系にしたりセクシーピンナップ風にしたりショートヘアーにしたりして楽しむというネタがあります。

そこで、アナとガブリエラはそのさらに斜め上をいって、プリンセスたちをホットドッグにしてみたらどうだろう?と考えたのでした。

選ばれたプリンセスは、ラプンツェル、『リトル・マーメード』のアリエル、『美女と野獣』のベル、そしてポカホンタス。

プリンセスたちの衣装は、レタスやオニオン、チーズで作っていき、出来上がったホットドッグは犬にあげて、ネタとしては完成です。

著者のふたりは、見目麗しく、歌も上手で、男性の力を借りてしあわせを手に入れるという、ディズニー・プリンセスたちのあまりの受け身っぷり、そしてそれを無批判に受け入れている大衆を皮肉っているわけですが、それにしてもプリンセスたちを犬に食べさせちゃうというのは、ちょっとナンセンスな気がします。

How to Eat a Burrito,” by Walter Green

ウォルター・グリーン「ブリトーの食べ方」

これもネタ記事。

Lucky Peachの第18号、「対決」特集でブリトーへのあふれる愛情をあらわにしたウォルター・グリーンが、アルミホイルに包まれたブリトーの正しい食べ方と間違った食べ方を、Gif画像で紹介しています。

食べる前にホイルを全部むくのは間違い。正しくは、ちょっとずつむきながら食べる。ナイフとフォークで食べるのは間違い。

この辺までは納得しながらブラウザをスクロールさせていくんですが、ウォルターはだんだんとネタに走っていきます。

まあ、ネタを文章で詳しく説明されることほど屈辱的なこともないと思うんで、続きはリンク先をご覧ください。

あ、でも最後の食べかたは他の料理でも応用できそう。

The Official Hostess Power Rankings,” by Lucas Peterson

ルーカス・ピーターソン「ホステス社の公式パワーランキング」

さまざまなジャンルの食品を、「おいしさ」プラスワンの評価軸で分布図にしてしまう、ルーカス・ピーターソンの「パワーランキング」シリーズ。

Lucky Peachの名物企画だっただけに、今後見られなくなってしまうのが寂しいところです。

いままでにダンキンドーナツイケアのフード日本のポッキーなんかがパワーランキング化されてきましたが、Eaterがピックアップしたのは、アメリカのお菓子ブランド「ホステス」のパワーランキング。

ホステス社の主要なお菓子・19種類が、ルーカスの独断と偏見によって分布図に配置されていきます。

図の横軸はいつものように「おいしさ」を示すものなのですが、この回の縦軸は「ペットの名前にふさわしいかどうか」。

このシュールさが、企画の人気の秘密なんです。

おいしさの軸で1位を獲得したのは、ジャンボはちみつパン。

レンジで20秒間チンすると最高なんだそうですよ。

そして最もペットの名前にふさわしい商品に選ばれたのは、トゥインキー。

おいしさでは中の下といったところですが、ペットの名前にするなら「最もキュート」と高評価でした。

ぼくは「ホーホー」がいちばんかわいいんじゃないかと思いましたが、確かにルーカスが指摘するとおり、大声だと呼びづらいですね。

以上、EaterがオススメするLucky Peachのベストストーリー13選をご紹介しました。

このほかにも、Lucky Peachではシリアスなものからおバカなものまで無数のストーリーが公開されていますので、ウェブサイトをいろいろと巡回してみてくださいね!

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。