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バックバンドをうんざりさせたうずら豆のチリ

史上最高のホームクック100人 #14

Junicci Hayakawa / 早川 純一
ククブク
Published in
9 min readSep 25, 2017

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アメリカのレシピサイト、epicuriousに掲載されている「史上最高のホームクック100人」という記事をもとに、アメリカの料理界でいまなお輝きを放っている家庭料理人たちをご紹介しているこのシリーズ。

前回のストーリーでは、ニューヨーク・タイムズ紙のフード欄で食べものについてさまざまな提言をおこなってきた記者のマーク・ビットマンや、ビバリーヒルズの豪邸で過ごすときには料理に夢中だったコメディ俳優のダニー・ケイなど、いつものように5人のホームクックたちをご紹介しました。

中華鍋を3つ並べて置くことができるコンロと、北京ダックを作ることができるオーヴンを備えたダニー・ケイ自慢のキッチンが、セカンド・キッチンだというのが驚きでした。

さあ、今週はいったいどんなホームクックたちが登場するのでしょうか?

最後までどうぞご覧ください!

タミー・ウィネット

ウィネットがステージで女性たちに『スタンド・バイ・ユア・マン(恋人のそばにいなさい)』と忠告し、離婚の試練と苦労について打ち明けていないとき、カントリーミュージックのファーストレディである彼女は、ツアーバスの後方で自分が食べて育ったスパイシーなうずら豆とコーンブレッドをいつも調理した。ありがたいことに、彼女のバックバンドがその料理を食べるのを助けてくれた。

タミー・ウィネットは、アメリカで最も有名な女性カントリー歌手。

彼女の最大のヒット曲『スタンド・バイ・ユア・マン』は、1980年に記録を塗り替えられるまで、カントリー史上最大のヒット曲でした。

歌詞を要約すると、女は男のそばにいて、ひとりに愛を捧げるものって感じでしょうかね。

カントリー・ミュージックの世界観は、日本の演歌にも通じるものがあります。

ミシシッピ州の農家に生まれた彼女が作る料理は、典型的なアメリカ南部料理で、1990年には『Tammy Wynette’s Southern Cookbook』を出版しています。

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彼女の得意料理で、しばしばバンドメンバーをうんざりさせたといううずら豆のチリのレシピはこちらになりますよ。

ハロルド・マギー

もしあなたが高級レストランのシェフだとしても、好奇心旺盛なホームクックだとしても関係ない。みんながハロルド・マギーのもとに群がってくる。彼の『On Food and Cooking: The Science and Lore of the Kitchen』は、なぜ煮込むとシチューの肉がやわらかくなるのか、たんぱく質の変性により、卵の白身がどのようにして不透明になっていくのかについての見識をただ備えているだけではない。それは、私たちが毎日食べているパンが、本当はいかに魅力的で、歴史的で、奇妙であるのかを思い出させてれるのである。

ハロルド・マギーは、調理科学や料理に関する著作で知られているアメリカの作家。

よく勘違いされるのですが、ブイヨンのブランドである「マギー」とは何の関係もありませんよ。

イエール大学で論文「キーツと味覚の進歩」により博士号を修めたハロルドは、母校で文学と創作の講師をしていた1984年に、代表作『On Food & Cooking: The Science & Lore of the Kitchen』を出版し、調理科学の第一人者となりました。

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CIAの生徒たちも辞書がわりに使っているというこの本は、日本では『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』というタイトルで売られていますので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

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ジョアン・ネイサン

40年のあいだに書いた10冊のcookbookのなかで、ジョアン・ネイサンはユダヤ料理とその伝統について複雑な(そして美味しい)肖像画を描いてきた。イスラエルのブレク、フランスのプレッツエル、そしてアメリカで好まれているようなふんわりしたマッツォボールスープによって。そして最新作の『King Solomon’s Table』には、遺産を守り、これらのレシピの背後にある物語を明るみに出したいという彼女の飢えが、かつてないほど苛烈にあらわれている。

ジョアン・ネイサンはユダヤ料理を得意とするcookbook作家、ジャーナリスト。

次のジュリア・チャイルド同様に、先日亡くなった編集者ジュディス・ジョーンズにより見出されたジョアンは、料理人たちにインタヴューをし、そのレシピと物語を記録に残すことで、ユダヤ料理の伝統を守っていくことを自らに課した使命にしているんです。

本文にもあった11作目のcookbook『King Solomon’s Table』は、ユダヤ料理の決定版として、今年の4月に発売になっています。

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ジュリア・チャイルド

ジュリア・チャイルドについていまさら何を言うべきか? 彼女がいなければ、アメリカ料理はまったく異なった様相を呈していただろう。チャイルドは確かにフランス料理の人気を高めたが、我々はテレビ画面を通じて彼女のチャレンジ、失敗、しくじり、成功、そして彼女の味を見てきたので、彼女は最高の食べ物は楽しいものであるべきだというを信念をアメリカのキッチンにもたらしたとも言えるのだ。

ジュリア・チャイルドについていまさら何を言うべきか、というのはククブクも同意見です(笑)。

ここでは過去のストーリーへのリンクを貼っておくだけにとどめておきますね。

アメリア・シモンズ

1775年ごろの魚を調理する女性

アメリカ人によって書かれたアメリカで最初のcookbookの作者は、多くの謎に包まれているが、このようなことがわかっている。その1796年のcookbook『American Cookery』は、フランスとイギリスから拝借した料理のテクニックにあふれているが、トウモロコシや七面鳥、カボチャやクランベリーといったアメリカの素材がまぎれもなく採用されている。それで、アメリカで最初のcookbookを書いたことに加えて、シモンズはアメリカ料理を定義づけた最初の人物とみなされているのである。我々は以来ずっと、それを作り続けているのだ。

「アメリカ人によって書かれた最初のcookbook」とされる『American Cookery』の著者アメリア・シモンズは、本文にもあるように多くの謎に包まれた人物。

だってこのcookbookがコネチカット州ハートフォードで出版されたのは、1796年のことですから。

唯一はっきりとわかっているのは、彼女の名前と、彼女が「アメリカ人の孤児」だったということだけ。

その序文からは、彼女が充分な教育を受けてこなかったこと、家庭内労働者であったことが推測されていて、北東部のニューイングランド人だったとも、オランダ語の影響を受けたハドソン川渓谷の出身だったとも言われています。

cookbookの正式なタイトルは、『American Cookery, or the art of dressing viands, fish, poultry, and vegetables, and the best modes of making pastes, puffs, pies, tarts, puddings, custards, and preserves, and all kinds of cakes, from the imperial plum to plain cake: Adapted to this country, and all grades of life』と寿限無的な非常に長いものになっていて、タイトルだけでおよそどんなレシピが掲載されているのかがわかってしまいますね。

いま読むのであれば、こちらのペーパーバック版がお手軽ですよ。

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今回は非常に濃いメンバーばかりでしたね。

また次回もお楽しみに!

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。