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チャイブを散らした赤レンズ豆のフムス

史上最高のホームクック100人 #10

Junicci Hayakawa / 早川 純一
ククブク
Published in
10 min readAug 28, 2017

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アメリカのレシピサイトEpicuriousに掲載されている「史上最高のホームクック100人」という記事をもとに、アメリカの料理史に残る偉大なホームクック(非プロの料理人)たちをご紹介しています。

前回のストーリーでは、アメリカでベトナム料理がメジャーとなるのにひと役買ったフードライターのアンドレア・グエンや、地産地消レストランの先駆け、「シェ・パニース」のアリス・ウォータースなどの5人をご紹介しました。

スティーヴン・レイチレンのレシピにあったパクチーと青唐辛子のソース、「アヒリモヒリ」が作りたすぎてたまらないです!

今回はいよいよ10回目になりますが、これでもまだ半分って、アメリカにはぼくたちの知らない才能がどれだけ眠ってるんでしょうか!?

それでは、今回の5人のホームクックをご紹介しましょう。

ルース・ライシル

何十年も、ルースは女王であり続けている。彼女は慈悲深く調査をし、分析し、食べものの世界をレストラン批評家(ニューヨーク・タイムズ紙)、編集者(大きな犠牲を払ってグルメ誌を辞めた)、ライター(『Tender at the Bone』のようなベストセラーがある)として案内してくれる。それなのに、まだ彼女が望むとおりのやり方で料理をしていないんですか?

ルース・ライシルは、以前にラスヴェガスの古書店のストーリーをご紹介したときに、ちらっと登場しましたね。

アメリカでベストセラーになった『Tender at the Bone』は、日本では『大切なことはすべて食卓で学んだ』というどこかで聞いたことのあるような平凡なタイトルで翻訳が出ています。

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病を抱えた母親との緊張関係が、彼女を料理の女王にしたんですね。

(ちなみに彼女の名前の発音、「Reichl」はライクルではなくライシルのようです。

最近はYouTubeで人名の発音もわかるので、なるべく本人の発音に合わせるようにしています)

アリス・トクラス

長いあいだ望まれていたにもかかわらず、トクラスが『The Alice B. Toklas Cookbook』をやっと書くことができたのは、恋人だったガートルード・スタインの死後だった。回顧録的cookbookという形式は、料理文学における功績(あるいは、後にも先にも出版されたcookbookの99パーセントより単純に面白いもの)とされているが、彼女が主に知られているのは、実際には全然ファッジではなく、トクラスもあまりよく理解していなかった、ハシシ・ファッジのレシピが含まれていたからだろう。そのレシピは大きな騒動をまきおこし(アメリカ版では当初それは削除された)、そのつもりもなくトクラスは食物のパイオニアとなってしまった。cookbook、そして料理の新傾向は、彼女なしではありえなかったかもしれない。

アリス・トクラスは、作家ガートルード・スタインの公私にわたるパートナーだった女性。

ガートルードと一緒にパリで芸術家たちが集まるサロンを開き、そこにはヘミングウェイやポール・ボウルズ、ピカソやマティスなどが通っていました。

ガートルード・スタインの現代文学、現代芸術に与えた影響はとても大きなものでしたが、その裏にはアリスの献身的な支えがあったんですね。

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トリーシャ・イヤーウッド

もちろん、イヤーウッドは『She’s in Love With the Boy』や『XXX’s and OOO’s (An American Girl)』といったヒット曲で名声を得た。しかし、我々は彼女のレシピのほうがより印象に残っている。彼女の最初の本、『Georgia Cooking in an Oklahoma Kitchen』はセレブのうぬぼれたプロジェクトではなく、クロック・ポットで供されるあたたかくてチーズいっぱいの「ブラック・アイド・ピー・ディップ」や、塩や酢ではなく、ライムで漬けた昔風の「イヤーウッドおばあちゃんのスイート・アイスバーグ・ピクルス」のような家族のレシピに満たされている。運が良ければ、イヤーウッドはこれからもヒット曲を — そしてcookbookも — 出し続けることができるだろう。

アメリカのカントリーミュージックに、現代的なポップスを合わせた「カントリー・ポップ」歌姫がトリーシャ・イヤーウッド。

1991年のデビューして以来、現在までに12枚のオリジナルアルバムをリリースしています。

本文に出てくる「クロック・ポット」というのは、アメリカの共働き世帯の味方である、スロークッカーの商品名です。

彼女の音楽と彼女の作り出すレシピの世界観が合っていることが、「セレブのうぬぼれプロジェクト」と思われない理由なんでしょうね。

積み上げてきたものって、大事だな〜。

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クリス・キンブル

象徴的な蝶ネクタイと、生まれながらの懐疑的につりあがった眉を身につけて、クリス・キンブルは「アメリカズ・テスト・キッチン」「クックス・イラストレイテッド」「クックス・カントリー」を創立した(そして現在は新たなベンチャー事業、「ミルク・ストリート」も)。そこには健康的なニュー・イングランドの実用主義と、アメリカの食べものに対する恥じらいのない愛が込められている。才能あるレシピ博士たちのエリートチームのリーダーとして、キンブルは、テストキッチンで過ごす数えきれない時間によってもたらされる洞察(マッシュルームソースの入った鍋でパスタをゆで、パイ用のルバーブは焼く前に水でやわらかくする)を重視し、料理の自明の理として言い伝えられたものはポイっと捨ててしまう。怠け者で死すべき運命の我々ホームクックに、もたらされるものがあるかって? それは、より良いレシピだけでなく、ディナーパーティーで披露できる料理のトリビアだ。

まるで『暮らしの手帖』の商品テストのように、料理に関するあらゆるテストをおこない、その結果を消費者たちにシェアしているのが、「アメリカズ・テスト・キッチン」。

「クックス・イラストレイテッド」「クックス・カントリー」と合わせた3つのブランド名で、テレビ番組や雑誌といった媒体を通じて、科学的に解析した食にまつわる情報を発信し続けています。

これらはクックス・イラストレイテッドの紙面ですが、どうです、かなりマニアックでしょ?

キンブルの仕事術についてのインタヴュー記事を見つけましたので、リンクを貼っておきますね。

時間を節約する秘訣は、メールを無視することなのか!

ハイディ・スワンソン

私たちの知る全員が、この女性のベイクド・オートミールに夢中だ。薄いライス・ケーキにトッピングをほどこす彼女のアイディアにも。彼女の自家製ストロベリー・アーモンド・ミルクにも。そしてサモサ・シェファーズ・パイにも。スワンソンのベジタリアン・レシピ(そしてめまいがするほど美しい写真)は、カリフォルニアスタイルの無理のなさで、ヘルシーな料理と甘やかした料理の境界をものの見事にまたにかける。そして伝え聞くほかのヘルシー志向のライターたちと違って、スワンソンはフレーバーについてのどんぴしゃの本能を持ち、流行の素材を熟練の技術で使用するので、彼女がミネストローネにアシュワガンダを入れるようなことを絶対にしないと、我々は信じることができるのである。

ハイディ・スワンソンは、カリフォルニアを拠点として活躍するフォトグラファー、cookbook作家。

さすがに本職の写真家だけあって、2015年に発売された最新作の『Near & Far: Recipes Inspired by Home and Travel』は、レシピの見事さもさることながら、載っている写真が本当に美しいです。

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なんでしょう、このタルトの華麗さ!

赤レンズ豆を使ったフムスだって、ぼくの作ったフムスとは大違い。

チャイブだ、チャイブの小花を使うんだ。

現在も更新が続いているブログ「101 Cookbooks」には、彼女の好きなcookbookからピックアップした料理や、彼女のオリジナル料理のレシピが綺麗にキュレーションされていて、やはりこちらも写真が大変美しいです。

いやいや、とても参考になります。

といったところで、今回も5人の紹介が終わりました。

どうぞ次もお楽しみに!!

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。