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ぼくは死の淵のおばあちゃんからレシピを教わった

アロン・シャヤの『Shaya』ついに発売!

Junicci Hayakawa / 早川 純一
ククブク
Published in
5 min readMar 20, 2018

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ニューオーリンズでモダン・イスラエル料理を提供しているレストラン「シャヤ」。

そのオーナーシェフであるアロン・シャヤのcookbook『Shaya: An Odyssey of Food, My Journey Back to Israel』が、3月13日についに発売になりました!

ククブクでご紹介したのが昨年の7月ですから、もう忘れちゃったというかたも多いと思いますが、このストーリーを読んでいただければ、どんなcookbookだったか思い出していただけるかもしれません。

シャヤがみずからの人生を変え、あるいは強く印象に残っているできごとを振り返りながら、そのときの感情と密接につながっている料理のレシピを紹介していくという、物語性の強いcookbookなんでしたね。

それぞれのレシピにはストーリーがある。

「cookbookを通じて他者の人生を生きる」ことを標榜しているククブクとしては、今年イチオシのcookbookです。

そんな『Shaya: An Odyssey of Food, My Journey Back to Israel』についてのレヴューが、出版業界紙パブリッシャーズ・ウィークリーのサイトに掲載されていました。

ジェームズ・ビアード財団賞を2度受賞しているシャヤが、すばらしいcookbookを上梓した。その本には、イスラエル移民としてアメリカにやってきた少年時代から、家政学の教師によって擁護されるろくでなしの高校生だった日々、ラスヴェガス、ニューオーリンズ、イタリアでのシェフとしての生活まで、彼の人生の旅についての感動的なストーリーにあふれている。

昨年7月はまだ構成がわかっていませんでしたが、いまは中身を見ることができるので、ちょっと目次を見てみましょうか。

第1章 イスラエルの響き

第1節 祖母のトウガラシとナス

第2節 これがボレカスです

第3節 たったひとつのハマンタッシェン

第4節 父との釣り

第2章 反抗と救済

第5節 肉屋とパン屋

第6節 空腹で逮捕

第7節 家政学のヒーロー

第8節 ウッドオーブンと蝶々

第9節 トレイフと苦難

第10節 ヴェガスか破産か

第11節 愛しのサバのためのステーキ

第12節 社長

第13節 サフタの最後のリュテニツァ

第3章 南部に故郷をさがしに

第14節 カトリーナのロスト・クラブ・ケーキ

第15節 レッドビーンズを救助する

第16節 ウィリー・メイのためのマニシェヴィッツ

第17節 デーツ休暇

第18節 それほどシンプルでなく

第4章 イタリアでの一時滞在

第19節 生地こね機のとなりのベッド

第20節 本当の生きているノンナ

第21節 ぼくのイタリアの守護天使

第22節 ピザ職人のエンツォ

第23節 日曜日から日曜日まで

第5章 帰国

第24節 家族の食事

第25節 いやいやながらのイスラエルシェフ

第26節 ニューオーリンズのイスラエルレストラン

章題をながめているだけで、いろいろぶわっとあふれてきちゃいます。

彼が思い出すのは、危篤の祖母に会うための最後の旅のこと。彼女は子どもだった彼に食べものについて教えてくれた人物だった。彼女はもううまくしゃべれず、彼もヘブライ語がほとんどわからないなか、彼女に食事をさせ、味を批評してもらうためにキッチンと寝室を行ったり来たりする。彼女が死ぬ前に、その料理の真髄をつかみ取ろうとして。

この本にはそうして聞き取ったレシピも掲載されている。クルミの入った冷たいヨーグルトスープ、コラードグリーンを使ったスパノコピタ、トマトとトウガラシのスプレッド「リュテニツァ」などだ。

いくつか耳慣れない料理の画像を。

スパノコピタ。

リュテニツァはもともとブルガリアのものらしいですが、いまやイスラエルのものと言ってもいいほどだとか。

ザクロのカラメルとキャンディーコートしたナッツを載せたラブネチーズケーキ、ザータル・フライドチキンなど、イスラエルのフレーバーをアメリカの料理に落とし込むシャヤの技術は見事だ。

ホワイト・ボロネーゼをかけたリコッタ・カヴァテッリ、サツマイモのカレー風味とポロネギのパイ、リングイネとハマグリのカルボナーラソースなど、ソウルフルな心あたたまる料理もある。

これからシェフになろうとするひとにも、すでになっているひとにも、これは必読の書であり、シェフの回想録のジャンルに加える価値がある。

というわけで、早くも来年の賞レースでは受賞まちがいないと思われる傑作cookbook 『Shaya: An Odyssey of Food, My Journey Back to Israel』。

お待たせしました、現在すでに発売中ですよ。

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。