金曜日のcookbookランキング
#067 ブルックリン文学案内
新たな料理本との偶然の出会いを楽しむ、金曜日のcookbookランキング。
ゴールデンウィークまっただなかのランキングをお伝えします!
今週は、群馬県の中之条でぼくたち夫婦がとてもお世話になった方から、山菜が届きました。
この季節、山菜の王様といえばこちら▲「たらの芽」。
そして、たらの芽が王様なら、こちら▲は山菜の女王の「コシアブラ」。
大好きなんです。
さらに、最近何かと話題になっている「行者ニンニク」。
混同しやすいイヌサフランとの見分け方は、「もんだらニラの匂いがするかどうか」だそうです😁
そしてこれ▼がちょっとめずらしい、ヤブレガサ。
破れた傘のような見た目から、そんな名前がついているんだそうですが、木の下に群生するので、地方によっては「木下」「藤吉郎」などとも呼ばれているんだそうですよ、ホントの話。
すっかり写真を撮り忘れてしまいましたが、すべて天ぷらにしておいしくいただきました。
毎年この時期にこの味を味わうと、美しい自然がいまも残る六合地区の風景を思い出してなつかしくなります。
今年こそ行こう!
それでは、今週のcookbookのランキングを見ていきましょう。
- James Hoffmann『World Atlas of Coffee』(Mitchell Beazley)
- 長山 一夫『鮨』(ピエ・ブックス)
- Daniel J. Flintほか『Contemporary Wine Marketing and Supply Chain Management: A Global Perspective』(Palgrave Macmillan)
- Charles Schumann『American Bar: The Artistry of Mixing Drinks』(Abbeville Pr)
- Ignacio Mattos『Estela』(Artisan)
- Andrew Tarlowほか『Dinner at the Long Table』(Ten Speed Press)
- Rachel Khoo『The Little Paris Kitchen: Classic French recipes with a fresh and fun approach』(Michael Joseph)
- Nancy Singleton Hachisu『Japan: The Cookbook』(Phaidon Press)
- Janice Poon『Feeding Hannibal: A Connoisseur’s Cookbook』(Titan Books)
- Jamie Oliver『5 Ingredients — Quick & Easy Food』(Michael Joseph)
出典:Amazon.co.jpランキング(すべてのカテゴリ > 洋書 > Cookbooks, Food & Wine / Kindle版は除く)
今週はジェイムズ・ホフマンのコーヒーの地図帳、『World Atlas of Coffee』が1位に輝きました。
1位になったのはプリント版ですが、Kindle版のほうのセールもまだ続いているみたいですね。
英語のcookbookで、これだけ日本語のレヴューがついているのもめずらしいです。
第2位には、鮨職人・長山一夫さんの鮨絵巻、その名もズバリ『鮨』がランクイン。
デザインが素晴らしいんですよね。
そのほか気になるところと言えば、第5位に「今後発売されるcookbook」として1月にご紹介したイグナシオ・マットスの『Estela』が、まだ先の発売にもかかわらずランクインしているところですかね。
さすが大統領のかよった店、期待度の高さがうかがわれます。
さて今週ククブクが注目するのは、第6位にランクインしたアンドリュー・ターロウほかの『Dinner at the Long Table』。
2016年9月発売のcookbookで、ククブクでご紹介するのは初めてですね。
著者のアンドリュー・ターロウは、ニューヨークのブルックリンでいくつかのレストランを経営しているシェフ。
彼が1999年にサウス・ウィリアムズバーグの工業地区に初めてオープンした「ダイナー」は、20年代に建造された食堂車を利用した、モダンなアメリカン料理を提供するダイナーなんです。
その後、アンドリューは「マーロウ&サンズ」「マーロウ&ドーターズ」「アキレス・ヒール」などのレストランやバーをブルックリンで次々とオープンし、ブルックリンが世界的に注目されるようになる一端を担ったと言ってもいいでしょう。
昔の「ほぼ日」でニューヨークの食事情の特集が連載されていたときに、ライターの佐久間裕美子さんに紹介されていたので、覚えてらっしゃるかたもいるかもしれませんね。
牛は一頭買いして、皮でバッグや靴まで作るというアンドリューの哲学が語られているので、ぜひご一読ください。
本書は、そんなニューヨークの食を変えたアンドリューによる初のcookbook。
数々のレストランで提供してきた料理のなかから夕食にピッタリのレシピを集めて、14のコースにまとめるという構成になっています。
このコースの名前がまた、いい雰囲気なんですよね。
列記してると、
- 寒い夜のカスレ
- 冬の終わりのラグー
- ルルのラムレッグ
- アグロとドルチェ
- ドリンク、ケーキ、キャビア&クリーム
- ベアとパエリア
- 夏よ、さらば
- 私も、あなたも、みんなブルーフィッシュが好き
- トマトと海
- 火を囲む午後
- 中秋の名月の下で
- お誕生日おめでとう
- リボリータの心がまえ
- スパイスを家に持ち帰る
- 12人前のハマグリ
- 1羽のいいガチョウ
- 新年前夜
こんな感じで、これはもう17篇の掌編がまとめられたアンソロジーみたいですよね。
具体的なレシピとしては、トマトトーストとパエリア、イカフライのサンドイッチとパンツァネッラ、クスクスとラムのタジンなどの軽食・メイン料理から、
ビスコッティやクレマカタラーナなどのデザートまでひと通りそろっていて、家族や友人の気楽な集まりや、大人数のパーティなんかにも対応できるようになっています。
エピグラフがT・S・エリオットの長編詩『四つの四重奏』からの一節、
You are the music
while the music lasts
(あなたは音楽だ
その音楽が続くかぎり)
だったり、冒頭に〈Eat Sunshine〉というアンドリュー自作の(?)詩が書かれていたりして、ブルックリンの文学カルチャー(オースターだったり、ジョナサン・サフラン・フォアだったり)が好きなひとにはたまらないと思いますよ。
といったところで、今週のランキングはここまで。
また来週をお楽しみに!