金曜日のcookbookランキング

#103 紅茶を愛したスパイ

Junicci Hayakawa / 早川 純一
Published in
9 min readJan 18, 2019

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新たな料理本との偶然の出会いを楽しむ、金曜日のcookbookランキング。

1月第3週のランキングをお伝えします。

先週から今週にかけて、久しぶりに美術館やギャラリーをまとめて回りました。

観てきたのは、

  • 東京都写真美術館《建築×写真 ここのみに在る光》《小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol.15》《マイケル・ケンナ写真展》
  • エスパス ルイ・ヴィトン東京《ヘスス・ラファエル・ソト Pénétrable BBL Bleu》
  • ギャラリーαM《絵と、vol.4 千葉正也》
  • TARO NASU《高木こずえ プレリュード》
  • 銀座メゾンエルメス フォーラム《「眠らない手」エルメスのアーティスト・レジデンシー展》
  • ギャラリー小柳《ミヒャエル・ボレマンス/マーク・マンダース》
  • クリエイションギャラリー G8《大原大次郎・田中義久 二人展 大原の身体 田中の生態》
  • 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館《現代日本演劇のダイナミズム》

あといくつか回ったんですけれど、思い出せないので省略します😁

全部1日で回ったのではなく、2日に分けて出かけてきました。

写真を撮る人間として、写美の展覧会が良かったのは当然として、あと強く印象に残ったのは、メゾンエルメスのグループ展と、演劇博物館の《現代日本演劇のダイナミズム》でした。

特に後者は良かった。

90年代にぼくは「bird’s-eye view」という劇団の公演をよく観ていたのですが、それ以降の現代演劇の発展を知ることができたのが大きな収穫でした。

ところで写美に行く前、恵比寿でゆっくり朝食を食べようとイートインのある「クロスロード・ベーカリー」に入ったのですが、ここは雰囲気が良くて、メニューも豊富でとても良かったです。

値段もだいたい1000円前後。

昔、恵比寿で働いていたことがあるのですが、当時からこんな店があったら、毎日通っていたかもしれないな。

それでは、今週もランキングを見ていきましょう!

  1. Hugh Johnsonほか『The World Atlas of Wine』(Mitchell Beazley)
  2. Hugh Johnson『Hugh Johnson’s Pocket Wine Book 2019』(Mitchell Beazley)
  3. James Watt『Business for Punks: Break All the Rules — the BrewDog Way』(Portfolio Penguin)
  4. Sarah Rose『For All the Tea in China: How England Stole the World’s Favorite Drink and Changed History』(Penguin Books)
  5. Simona Zavadckyte『Japanese Tea: A Comprehensive Guide』(Independently published)
  6. Anthony William『Medical Medium Life-Changing Foods: Save Yourself and the Ones You Love with the Hidden Healing Powers of Fruits & Vegetables』(Hay House Inc.)
  7. 藤田裕子『カラー版 英語でつくる和食―寿し、天ぷら、豆腐料理…日本の代表料理からマナーまで』(ナツメ社)
  8. Mikkel Borg Bjergsoほか『Mikkeller’s Book of Beer』(Jacqui Small)
  9. Greg Kochほか『The Craft of Stone Brewing Co.: Liquid Lore, Epic Recipes, and Unabashed Arrogance』(Ten Speed Press)
  10. Jeff Alworth『The Secrets of Master Brewers: Techniques, Traditions, and Homebrew Recipes for 26 of the World’s Classic Beer Styles』(Storey Books)

出典:Amazon.co.jp 売れ筋ランキング(すべてのカテゴリ > 洋書 > Cookbooks, Food & Wine / Kindle版は除く)

今週も異常なランキングとなりました。

なんと、10冊中8冊が飲料のガイドブック!

内訳をみると、2冊がワイン、2冊が茶、そして4冊がクラフトビールのガイドブックでした。

個人でお酒を作ることは法律で禁じられてますから、きっとクラフトビールの会社で働いているひとが勉強のために買ったりしているんでしょうね。

そんななか、やはりワイン本は一般のファンにも幅広く人気があるからでしょうか。

今週はワインの神様、ヒュー・ジョンソンによるバイブル『The World Atlas of Wine』が1位を獲得しました。

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この本は『世界のワイン図鑑』というタイトルで、ガイアブックスから日本語訳も出ていますよ。

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『世界のワイン図鑑』より

そして2位にランクインしたのは、同じくヒュー・ジョンソンの2019年版ワインガイド『Hugh Johnson’s Pocket Wine Book 2019』でした。

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『The World Atlas of Wine』でワインの全体像をつかみ、『Pocket Wine Book 2019』で最新情報もゲットする。

ワインの勉強方法としては完璧な組み合わせですね。

さて、そんななか今週ククブクが注目したのは、4位にランクインしたサラ・ローズの『For All the Tea in China: How England Stole the World’s Favorite Drink and Changed History』です。

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紅茶って、アフタヌーンティーの習慣が象徴するように、イギリスでとても人気がありますけど、その原産国は中国。

中国で栽培されていたチャノキがすべての元なんです。

そして2011年に発売されたこの本は、イギリスが国内で大量消費される紅茶を独自生産するために、中国からチャノキの苗木を盗み出し、支配下にあるインドの農園で栽培をおこなおうとする一大計画を追ったノンフィクション小説になっています。

要は、19世紀の植民地時代の産業スパイをテーマにした、サスペンス仕立てのノンフィクション小説なんですね。

著者のサラ・ローズはシカゴ出身のジャーナリスト/作家。

彼女の対象分野は食文化だけでなく、香港返還やドットコム・バブルの終焉など国際政治や国際経済についても著作があり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙やボナペティ誌などにも文章を寄せています。

実はこの本もすでに日本語訳が出版されていて、原書房から『紅茶スパイ―英国人プラントハンター中国をゆく』というタイトルで2011年に発売されているんです。

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「爽やかなだけじゃない、ドロドロとした紅茶の歴史も楽しく学ぶことができる!」と、邦訳版も評価が高いようですので、英語で読むのが面倒くさいというひとはぜひこちらをお手にとってみてください。

といったところで、今週のランキングはここまで。

また来週をお楽しみに!

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。