金曜日のcookbookランキング

#100 人生はチョコレートの箱

Published in
10 min readDec 28, 2018

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新たな料理本との偶然の出会いを楽しむ、金曜日のcookbookランキング。

2018年12月最後のランキングをお伝えします。

そしてサブタイトルを見てお気づきの方もいると思いますが、おかげさまでこの金曜ランキング、本日記念すべき100回目を迎えました🎊

ということで、今日はちょっとだけこのランキング記事の歩みについて振り返ってみたいと思います。

第1回を書いたのは、2017年1月20日。

この連載では、Amazon.co.jpにおけるcookbook(そのほかフード関連書籍も含む)の売れ筋ランキングを定点観測しているわけですが、この第1回ではどうして日本のAmazonを対象にしたのかを、

アメリカではなく日本のAmazonにした理由は、アメリカのランキングだといわゆるタレント本の類がランクインしてしまうから。

タレント本が悪いというわけではないのですが、ぼくの目的が純粋にcookbookとしてのトレンドを追うことにあるので、一度「アートブック好きの日本人」というフィルターをかけたランキングを追うことにします。

なんて説明していました。

このときはまだぼくのなかでcookbookの定義が定まっていなくて、ただのアートブックと同視している感じですが、その後に「優れたデザイン性があり、コンセプトにひとと風土と文化が見える海外の料理本・レシピ本」と明確に決めたこともあって、最近ではスヌープ・ドッグやアクション・ブロンソンのcookbookも紹介しています。

ちなみに、記念すべき第1回でランキング1位を獲得したのは、ジャニス・プーンの『Feeding Hannibal』。

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いまだにトップ10に顔を出す作品で、本当に息が長いロングセラーだと思います。

第2回では、いまも人気のレイチェル・クーが登場。

以降、ランキングになぜか入り込んでくるカレンダーやレシピカードをククブクでは除外したり、純粋にcookbookとは言えないお酒のガイドブックをどうしようか、食品の研究書はどうしようかと、いろいろ紆余曲折を経ながらここまでやってきました。

100回まで続けてきていちばんこだわったのは、本当に金曜日のデータを出すということ。

もうみなさんもお分かりと思いますが、このククブクのストーリーは予約投稿でまとめて書いたりしているのですが、この金曜ランキングだけは本当に金曜日の売れ筋ランキングを反映させようと最初から思ってきました。

それは、こういうフード関係のウェブ記事にあまりに嘘で適当なものが多いということに対する反発のようなものもありますし、「金曜日はかならず記事を書く」という縛りを自分にかけることで、フリーランスでリズムを崩しがちな生活のなかに、一定のルールを持ち込もうという狙いもありました。

そのせいでどうしても金曜日に書けないときもあって、実際の100週間からはちょっと遅れての、今日の第100回目となりました。

これからもぼくの書きたいという恣意に頼らない「偶然の出会い」を大事に、日本語ではここでしか紹介されないようなcookbookをすくい上げていきたいと思います。

これからもどうぞお付き合いくださいませ。

100回を記念して、妻がアニメーションイラストを描いてくれました。

それでは、今週もランキングを見ていきましょう!

  1. Chelsea Monroe-Cassel『The Elder Scrolls: The Official Cookbook』(Insight Editions)
  2. Victoria Rosenthal『Fallout: The Vault Dweller’s Official Cookbook』(Insight Editions)
  3. Editors of Southern Living Magazine編『The Bubba Gump Shrimp Co. Cookbook』(Oxmoor House)
  4. Alex Dayほか『Cocktail Codex: Fundamentals, Formulas, Evolutions』(Ten Speed Press)
  5. Meik Wiking『The Little Book of Hygge: The Danish Way to Live Well』(Penguin UK)
  6. Jacqueline Butler『Modern Sugar Flowers: Contemporary Cake Decorating with Elegant Gumpaste Flowers』(SewandSo)
  7. Peggy Porschen『Cakes in Bloom: The art of exquisite sugarcraft flowers』( Quadrille Publishing Ltd)
  8. Cassie Brown『The Kew Book of Sugar Flowers』(Search Press)
  9. Michael Pollan『Cooked: A Natural History of Transformation』(Penguin)
  10. Steven Raichlen『The Brisket Chronicles: How to Barbecue, Braise, Smoke, and Cure the World’s Most Versatile Cut of Meat』(Workman Pub Co)

出典:Amazon.co.jp 売れ筋ランキング(すべてのカテゴリ > 洋書 > Cookbooks, Food & Wine / Kindle版は除く)

今週の首位はビデオゲーム『The Elder Scrolls』シリーズの公式料理本、『The Elder Scrolls: The Official Cookbook』でした。

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しばらくランク外にありましたが、来年3月のリリースが近づいて予約数も増えてきているようですね。

サンプルページも上がってきています。

『The Elder Scrolls: The Official Cookbook』より

そして第2位には同じくビデオゲーム『fallout』シリーズの公式料理本、『Fallout: The Vault Dweller’s Official Cookbook』がランクインして、ベセスダ・ソフトワークスのゲーム関連本が久々のワンツー・フィニッシュとなりました。

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ゲームのcookbookといえば、以前にお伝えした『MOTHER』の非公式cookbookがリリース間近なのですが、これはまた近々ストーリーを改めてご報告しますね。

さて今週ククブクが注目するのは、エンターテインメント系の流れもあって、第3位の『 The Bubba Gump Shrimp Co. Cookbook』を見てみたいと思います。

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ババ・ガンプ・シュリンプと言えば映画ファンにはおなじみ、アカデミー賞受賞作『フォレスト・ガンプ/一期一会』に登場する架空のエビ漁会社ですよね。

でもいまは『ハードロックカフェ』を運営するWDIが、映画インスパイアのレストランを日本でライセンス展開しているので、普通のシーフードレストランのことだと思っているひともいるかもしれません。

もともとは映画なんですよ!(さらにもともとは小説なんですが)

さて本書の内容ですが、このチェーン展開しているババ・ガンプ・シュリンプの料理とは無関係のようで、映画『フォレスト・ガンプ』から独自にインスパイアされたエビ料理がおよそ75種類掲載されています。

cookbookのレシピとは無関係です

『ガンプ』の舞台はアメリカのアラバマ州がメインで、本書に載っているレシピもそれにふさわしい南部料理となっています。

cookbookのレシピとは無関係です

エビのケバブ、シュリンプ・クレオール、エビのガンボ、シュリンプ・カクテルなどなど……。

cookbookのレシピとは無関係ですってば

アメリカで『ガンプ』が公開になった1994年に発売された25年前のクラシックcookbookなので、料理ページの写真がないのはご容赦ください!

特筆すべきなのは、このcookbookを編集しているのが1966年創刊のアメリカ南部のライフスタイル雑誌「サザン・リビング」であるという点。

中身がしっかり確かめられないのが難点なのですが、そこは天下のサザン・リビング、きっと実用性においてもちゃんとしたcookbookになっているはずです。

映画版か小説版かわからないのですが、どうやらフォレストのママが「サザン・リビング」を愛読しているらしいんですよね。

「この雑誌は食べものの扱いかたが上手ね」なんてセリフもあるらしいのですが、映画では出てこなかった気がするので、映画よりもエピソードの豊富なウィンストン・グルームの小説版に出てくるんでしょうかね。

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映画は本当に素晴らしい作品ですので、食わず嫌いをしているひとはこの年末年始にでもぜひ見てみてください。

といったところで、今週のランキングはここまで。

そして今年のランキングも最後ですね。

また来週とはいえ、次回更新は2019年。

どうぞ良いお年をお過ごしください!

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。