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穀物の情報、学んで新たなパン作りを構想

Eaterが選ぶ2021年春のオススメcookbook その13

Junicci Hayakawa / 早川 純一
ククブク
Published in
10 min readMay 17, 2021

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3月22日付けのフード情報サイト「Eater」に掲載された、春の新刊cookbookのレビューを読んでいってます。

前回のストーリーでは中東で随一の美食の国、シリアの家庭料理の味をまとめあげた『Sumac: Recipes and Stories from Syria』をご紹介しました。

地中海に面した土地柄もあるんでしょうけど、食材や調理法がギリシャ料理や東欧料理によく似ていて、アラブっぽいイメージがそんなになかったのが驚きでした。

さて本日は「野菜にこだわるように穀物にもこだわろう」というコンセプトで作られたcookbookをご紹介いたします!

ロクサーナ・ジュラパット『Mother Grains: Recipes for the Grain Revolution』(W・W・ノートン&カンパニー、4月20日発売)

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このcookbookは、今年の3月にククブクで取り上げていますね。

著者のプロフィールや内容についても、かなり踏み込んでご紹介したつもりなので、もうそんなに新しい情報もないかな……。

自分の食べているものがどこからやってくるのかを知ろうというトレンドは、穀物業界にはあまり浸透していない。

それでも日本の製パン業界では「はるゆたか」「春よ恋」といった小麦の銘柄が人気がありますし、うどんやそばの愛好家のあいだでも品種についてのマニアックな会話が交わされたりするので、日本人の穀物の品種に対する知識も興味も、世界的に見れば深い方なんじゃないかな?

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こういう「出自を気にする」ところは、日本人は世界でも屈指の伝統と能力を有していると思います。

いっぽう、アメリカでは、

「キング・アーサー」や「ボブズ・レッド・ミル」の中力粉は、いまだにこだわりの強いひとが好む商品だと考えられている。

どちらもオーガニックだったり、グルテンフリーだったりと消費者のニーズに合わせた多様な商品展開をしている製粉メーカーで、パンを作るひとたちに愛好されています。

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特にボブズ・レッド・ミルの商品ラインナップは圧巻ですよ!

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しかしロサンゼルスの「フレンズ&ファミリー・ベーカリー」のオーナー、ロクサーナ・ジュラパットは『Mother Grains: Recipes for the Grain Revolution』のなかでキッチンにある小麦粉、穀物、種子類にもちゃんと注意を払い、すでにあるものを最大限に活用することを説いている。

「フレンズ&ファミリー」はロサンゼルスのタイ人街の近くにあるベーカリーで、地元の穀物を使ったパンやペストリーが人気のお店でした。

春のパン祭り!

本書ではジュラパットが選んだ8つの穀物(大麦、ソバ、トウモロコシ、オーツ麦、米、ライ麦、ソルガム、そして小麦)に焦点を当てている。これらはすべて古代穀物とみなされてきたもので、何百年ものあいだ身近にあったことで、文化や料理が形成されてきた。そしてアメリカ国内のどこでも、地元の生産者から入手することが可能なものでもある。

ちょっと耳慣れない「ソルガム」が、中学地理で習った「コーリャン」だということは、以前お伝えしましたね。

アメリカは世界最大のコーリャン生産国で、中部、特にカンザス州が生産量の60パーセントを占めるなど突出しています。

https://www.researchgate.net/figure/United-States-Sorghum-Production-Taken-From-USDA-World-Agricultural-Outlook-Board-2004_fig6_29868848

ただし、家畜の飼料や製糖用に利用されることがほとんどで、穀物として再注目されるようになったのは、グルテンを含まないことが注目されるようになったからだと言われています。

読者にパンだけでなく穀物全体のことを考えてもらえるように、この本のレシピはその並び順まで工夫されている。そう、美味しいライ麦のフォカッチャの作り方はもちろん、大麦のキムチ炒め、ソルガムの塩アイスクリーム、そしてオーツ麦のもっちりドーナッツも学べるのだ。

『Mother Grains』のレシピページがサンプルとして上がっていないのでお見せできないのですが、雑誌『ポナペティ』のウェブサイトに「リコッタ・コーンミール・パウンドケーキ」、

「ヒトツブコムギのショートブレッド」、

「蕎麦粉のチョコレートケーキ」、

「スペルト小麦のブルーベリーマフィン」、

「グラノーラ・スコーン」、

いちど食べたら止まらなくなる「トラブル・クッキー」、

「マカダミアとブラウン・バターのブロンディ」の作り方が載っていますので、どんな穀物をどのように活用しているのか、参考にしてみてくださいね。

収納テクニックや保存可能期間、語彙の学習、そして自分で粉をひくためのアドバイスなど、ジュラパットの本は穀物の微妙なフレーバーや品質を評価する方法だけでなく、農産物や肉に対するのと同じくらいの注意を払って穀物を取り扱うことを、家庭の料理人たちに教えようとしている。『Mother Grains』は穀物をケーキを作る際の味のしないつなぎとして考えるのではなく、それ自体を称賛の対象としてとらえられるようにしてくれるのだ — — ジャヤ・サクセナ

この『Mother Grains』にもたぶん載っていると思うのですが、ぼくが面白いと思ったのは、ロクサーナが載っている8つの穀物のうちトウモロコシを除く7つで「チョコレートチップ・クッキー」のレシピを作っているところ。

穀物によってレシピの分量はもちろん、フレーバーや食感、いっしょに飲みたくなるドリンクが変わってくるようで、ああ、こうすることで穀物の違いが実感として分かるようになっているのだなと感心しました。

チョコチップクッキーのレシピはこちらのサイトにも載っていますので、参考になさってくださいね。

というわけで、本日はここまで。

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。