料理の「精神」はすべてのひとに開かれている
だれもがファインダイニングを経験できるcookbook
北欧料理のシェフといえば、いままでククブクではレネ・レゼピやマグナス・ニルソン、フレデリク・ベルセリウスなどをご紹介してきましたが、
このひとは初めてかもしれません。
デンマークのコペンハーゲンにあるレストラン「ガイスト」でシェフを務めているボー・ベック。
今日は彼がちょうど1年前に出したcookbook『In My Blood』をご紹介したいと思います。
エスクァイアのウェブサイトに今年1月9日に掲載された記事をもとにお届けします。
ボー・ベックは人びとに食べ物を怖がらないでほしいと思っている。「それはたくさんの問題を解決してくれるんです」と言って彼は笑う。
本書の著者ボー・ベックは、デンマーク・コペンハーゲンの出身。
ロンドンやパリなどのレストランでマルコ・ピエール・ホワイトやアラン・パッサールのもとで修行をした彼は、コペンハーゲンに戻ってレストラン「パウスシャン」の料理長に就任。
その独創的な料理により、ミシュランガイドのひとつ星を獲得します。
そのときは同じコペンハーゲンのレストラン、「ノーマ」のレネ・レゼピをして「パウスシャンがヨーロッパでいちばん興味深いレストラン」と言わしめるほど、世界の注目を集めたんです。
彼が言っているのはレストラン — — シェフのフラッグシップ店、コペンハーゲンのガイストのような — — の問題ではない。しかし家では、彼らと次の食事のあいだにあるのはスキレットと炎だけだ。
エスクァイア流の気取った文体なので、ちょっと意味がわからないですね。
単純に、レストランと違って家で料理をするひとが使えるのは「スキレットと炎だけだ」ってことだと思います。
「人びとが自分の家、あるいは友人やボーイフレンド、ガールフレンドの家などで何かを作ろうと試みて、それがうまくいったというのが、私は好きです。彼らは失敗すると信じていた。そして彼らは決断するんです。「やり方を変えてみよう」って。大事なのは食べることです。だからもし私が何かひとつ変えるとしたら、食べ物を敵だと思ってしまう恐怖と和解することです」 とベックは語る。
そんなボー・ベック、2010年にパウスシャンをクローズし、2011年、同じコペンハーゲンに「ガイスト」をオープンします。
かた苦しいファインダイニングではなく、友だち同士で気軽に楽しめる店にしようと、前菜からデザートまで続くコース制は採用せず、自分で好きな料理を好きな順番で食べられることをコンセプトにして、お店のウェブサイトにもそれはしっかり明記されています。
レストランにやってくる人びとに生活のすべてがかかっているひとからの、意外なアドバイスに聞こえるかもしれない。しかし自分のために作ることや、生の食材を料理に変える行為と切っても切れない失敗と挑戦のプロセスは、彼の最新作『In My Blood』で焦点を当てたことがらだ。
本書『In My Blood』には、そんなガイストのベストレシピを100品ほど収録。
ボー・ベックのシグニチャー料理のひとつ、「アボカドのウエハー キャビアとアーモンドオイル」のレシピも掲載されています。
100のレシピが5つの章に分割されている。「流行」「トリビュート」「入門」「再会」そして「旅行」が5つの柱だ。ベックは、食材(その多くは3種類から5種類)も作りかたもシンプルなレシピを提供してくれる。その目的は? あなたや私、みんなに、だれでもミシュランの星付きシェフのように料理をすることができると示すことだ。
料理の写真はどれも俯瞰から撮影されていて、そのディテールがわかりやすくなっています。
ひとつひとつの料理にどれだけの時間や工夫が費やされているか、写真を見ているだけでも伝わってきますよね。
レストランのコンセプトにもよくあった水彩のイラストが、cookbook全体に散りばめられています。
「彼らはレストランで食べる機会が減ってるのだろうか? おそらくイエスだ。しかしレストランを訪れたときは、上質の料理とサービスを要求することができるだろうか? もちろんできる」とベックは語る。「それは、だれにとっても成功なんだと考えているよ」
高級レストランで料理を食べられるようになることが「人生の成功」だとは思いませんが、ファインダイニングでの食事を含め、いろいろな体験をすることが人生を豊かにしてくれることは間違いないですよね。
正月にテレビで『芸能人格付けチェック』ってやっているじゃないですか。
あれを観ていて気づいたのですが、こと味覚をチェックする問題に関しては、きちんと正答できるのはベテラン芸能人で、若手芸能人ほど答えをまちがえるんですよね。
やっぱり味覚というのは「経験値」を積んで自分のなかにインデックスを作っていくものなんだなぁとつくづく思いました。
話が脱線しましたが、このcookbookを書きあげるために、ボー・ベックは2018年に来日し、東京のホテル「アマン東京」に2週間缶詰になったんだそうですよ。
その縁もあって、10月には同ホテルでディナーイベントも開催されたのだとか。
「経験値」を上げに、行ってみたかったなー。