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ライフ・オブ・パイ

Eaterが選んだ2020年秋のcookbook その3

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ホリデーシーズンを目前に、今年の秋に発売されるcookbookの新刊17冊を紹介しているオンラインフードマガジン「Eater」。

この記事の中身を少しずつ読んでいってます。

前回のストーリーでは、オーストラリアにあるアフガニスタン料理店の初のcookbookと、腸にやさしいサワードウを使った甘いお菓子のcookbookをご紹介しました。

インドと中東のはざまにあるアフガニスタンは、料理もその両方からの影響が感じられましたね。

日本で食べたかったら、ドラマ『孤独のグルメ』で取り上げられたお店が東中野にあるそうですよ!

それでは今日もリストの続きを見ていきましょう。

メリー・マルティネス『The Mexican Home Kitchen: Traditional Home-Style Recipes That Capture the Flavors and Memories of Mexico』(ロック・ポイント、9月15日発売)

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メリー・マルティネスが昔ながらのレシピブログの世界、ウェブサイトの「メキシコ・イン・マイ・キッチン」を経由して、出版の世界にやってきた。マルティネスはメキシコ生まれ。教師として国内の様々な地域を旅し、その後再び旅をする合間に地元の女性たちから学び、ついには合衆国までやってきた。

著者のメリー・マルティネスは、メキシコ湾に面したタマウリパス州タンピコの生まれ。

8人きょうだいの長女だった彼女は、マサを作るためのトウモロコシを焼いたり、ストーブにくべる薪を集めたりして、幼いころからキッチンの手伝いをしていたのだそうです。

『The Mexican Home Kitchen: Traditional Home-Style Recipes That Capture the Flavors and Memories of Mexico』より

夏は祖母が住むベラクルス州で過ごし、20歳で教師になってからは南部に移り住んだりして、結果としてメキシコじゅうを渡り歩いたメリーは、現在はテキサス州ダラスに住んでいます。

レシピ・フォーラムをあちこち渡り歩いたあと、10代の息子のために家族のレシピを記録するための方法として、サイトを創設したのが2008年。

このサイト、「メキシコ・イン・マイ・キッチン」です。

インターネットを通じて、彼女はおばあちゃんのレシピを求める多くのメキシコ移民の閲覧者を獲得した。そしていま、彼女のデビューcookbook『The Mexican Home Kitchen』が出版となった。そこには旅に基づく確かな知識が反映されているが、レシピのバリエーションや下ごしらえ・食材の代替方法など、役立つコツも提供してくれる。

息子のために家族のレシピを残そうというアイディアが発展したものだけあって、cookbook 『The Mexican Home Kitchen』も家族がその思い出をいつまでも共有できるような、日常的で本格的な家庭料理のレシピがたくさん掲載されています。

『The Mexican Home Kitchen: Traditional Home-Style Recipes That Capture the Flavors and Memories of Mexico』より

マルティネスの本はメキシコ家庭料理の基本を扱ったものだ。レシピにはアボカドのスライスとみじん切りのハラペーニョで飾り立てた「カルド・デ・ポジョ」のようなコンフォートフードや、「モーレ・ポブラーノ」のような特別な日のごちそうも含まれている。

『The Mexican Home Kitchen: Traditional Home-Style Recipes That Capture the Flavors and Memories of Mexico』より

レシピはどれもシンプルで、メキシコ料理が初めてというひとにも充分。それでいて自家製の「アロス・コン・レチェ」や「サルサ・ベルデがけチチャロン」で育ったひとにアピールする、郷愁を感じさせるようなクオリティがある。

「アロス・コン・レチェ」は子どものおやつとして人気のライス・プディング、「チチャロン」は豚の皮を油で揚げたスナックのことです。

『The Mexican Home Kitchen』のページをめくっていると、私は自分の小さいころに継母の家を訪ねたことを思い出した。そこで私は大勢の孫たちとともにテーブルの周りに座り、湯気を立てたアトーレ入りのボウルにリッツ・クラッカーを浸したものだ。

アトーレはトウモロコシを原料にした飲み物で、マヤ民族のひとたちが毎朝習慣的に飲んでいるのだそうです。

178ページにあるマルティネスの「アトーレ・ブランコ」のレシピを見て、新たなインスピレーションを得て、私はマサ・ハリナを買いに店に向かったのだった — — ブレナ・ハウク

うちにもメキシコ料理の辞典的なcookbookはあるのですが、この『The Mexican Home Kitchen』のほうがレイアウトが整っていて見やすいと思いました。

『The Mexican Home Kitchen: Traditional Home-Style Recipes That Capture the Flavors and Memories of Mexico』より

買い替え候補の筆頭。

ペトラ・”ピティー”・パレデス『Pie for Everyone: Recipes and Stories from Petee’s Pie, New York’s Best Pie Shop』(エイブラムス、9月22日発売)

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もしあなたがパイ好きでないなら、ペトラ・パレデスの「ブラックボトム・アーモンド・チェスパイ」を食べたことはないだろう。

今年の夏にGO TOで横浜に行き、「パイホリック」でパイ好きになったぼくが通りますが、ブラックボトム・アーモンド・チェスパイというのは食べたことがないですね(当たり前)。

こんなパイだそうです。

チョコレートがナッシュの上にアーモンドがたっぷり載っていて、アマレットの香りがするんだそう。

ベイキングをする農家の家庭(両親はヴァージニア州北部の宝物、マムズ・アップルパイ・カンパニーを1981年に創業している)に生まれたパレデスは、パイ作りに関する相当の知識を有している。2014年、彼女と夫のロバート・パレデスは、ロワー・イーストサイドに「ピティーズ・パイ・カンパニー」をわずかな元手でオープンし、現在、デランシー通りにあるその日当たりの良いスイーツカフェは、ニューヨーク市で最高のパイショップのひとつとみなされている。

ニューヨークにあるパイの専門店「ピティーズ・パイ・カンパニー」は、地元の果実などを使ったいかにもアメリカンなパイが人気で、これまでにも数多くのメディアに取り上げられてきました。

2018年には、ブルックリンに自然派ワインやカクテルなどとともにパイを味わえる「ピティーズ・カフェ」もオープンしています。

ピティーズ・パイの中心にあるのはシンプルな目標。フレーバーにあふれ、サクサクで、やわらかいクラストと具材の完璧なバランスという目標だ。

そう言われてみると、このお店のパイの見た目はどれもクラシカルな感じで、野暮ったい、「映えなそう」な感じ(ごめんなさい)。

でもそれが、パイの完璧なバランスを具現化している姿なんですね。

『Pie for Everyone』はこれを家庭で実現する方法を読者に教えてくれる。書籍は基本的な情報(材料の入手のしかた、パイ作りをより簡単に効率的にしてくれる買うべき道具)で始まり、クラストとクラム、パイの具材と章が続いていく。パイの作り方は何百通りもあるが、パレデスはバターをたっぷり使ったクラストの長所を信じている。「もし私のペストリー生地のなかからひとつだけを使うんだったら、」と彼女は記している。「バター・ペストリー・ドウがいいと思う」。

さまざまなパイ生地のレシピをまとめた「クラスト&クラム」の章には、パレデスおすすめの「パター・ペストリー・ドウ」のほか、「ヴィーガン・ペストリー・ドウ」「コーン・ペストリー・ドウ」、他にもグルテンフリーのものや全粒粉を使ったものなど、10種類以上のバリエーションが展開されています。

これだけあれば、どんな食習慣のひとにも安心です。

レシピには甘いものもしょっぱいもの(キッシュを含む)もあり、『Pie for Everyone』には「メイプル・ウィスキー・ウォルナッツ」や「チョコレート・クリーム」のような通年のシグニチャー・パイから、

「ストロベリー・ルバーブ」や栗のカスタードとブラックラムに漬けたチェリーを使ったニューヨーク名物の「ネッセルローデ」といった季節の人気商品まで、幅広くカバーしている。

これまでピティーズ・パイのファンだったひとも、そうでなかったひとも、パイを愛し焼くひとであれば、パレデスから教わることに価値を見出すことができよう。自分にとってパイ作りとは、毎回リボンをかけたくなるような偉業なのだと語るベイカー、パレデスから — — エズラ・エロル

ぼくいま何か一冊、パイ作りのcookbookを買おうと思っているんですよね。

デトロイトの「シスター・パイ」のcookbookがいいかなと思っていたけれど、この『Pie for Everyone』が対立候補として急上昇してきましたよ。

といったところで、今日のご紹介はここまで。

続きは以下のリンクからお進みください。

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ライター、フォトグラファー。わかさいも本舗さんのウェブサイトのコピーなど。海外の料理本を紹介するサイト「ククブク」は現在お休み中。ロン・パジェットの詩を趣味で訳してます。プロフィール画像は有田カホさんに描いていただきました。